小説の習作:太陽 整理整頓 ハンカチ 

 

10月だというのに、今日はとても暑い。

暑いというのに、どうしてか同じクラスの神崎さんに偶然会ってしまった。

私も駅に用事があるから一緒に行こうと言われ、二人で歩いている。

並んで歩くと周りから羨望の眼差しを受けるくらい彼女は美人だ。

俺にも何か青春のチャンスをこの期につかめるのでは? 

そう思いたかったが、今日この子に会ってしまうのは運が悪い。

今日は誰とも会っちゃいけない日なんだ。

思ったより太陽の日照りが強いのと、焦りで汗が出てしまう。

本当は尻のポケットにあるハンカチをとって、額を拭いたいのだが、なぜかそれができない。

どうしてか。

実は今日、ハンカチだと思って入れた布切れは、妹のパンツなのだ。

さっきトイレで手を拭こうとした時気づいた。

朝起きて寝ぼけていたのか、というかいつも俺の洗濯物が置いてあるスペースにパンツがあるのが異常なんだ。責任は俺ではなくお母さんにあるんだ。

折りたたむと結構ハンカチに見える……いや見えないな、もっとよく見ていれば。

どうして今日に限ってこうも暑いのだ、あぁ太陽が憎い。

そうやって思いつめていると、さらに汗が吹き出てくる。

「ちょっと、汗すごいよ? 体調、悪い?」

俺の顔があまりにも異常だったのか、気づかれてしまった。

「えぇ?うん大丈夫、、あ!元気だよ俺!問題ない!」

もう顔が限界だ。いい加減汗を拭えといつツッコミがきてもおかしくない。

どうするべきか。この状況、私には2つの選択肢しか思いつかなかった。

観念してパンツで汗を拭うか、用事を思い出した事にして立ち去るか。

前者は俺が変態だと思われることを覚悟で、彼女と駅までの約10分間をともに過ごせる。

後者は一見安パイと見えるが、ここで別れるのは勿体無のだ。いつ会えるかも分からない。なんかもうデートの約束とかしちゃいたい。

俺の中での優先順位はリスクよりも今日神崎さんと少しでも仲良くなること…!。うまくやれば、ハンカチに見えるかもしれない。よし、やるしかない。

「ほら、これ貸してあげるよ」

その声にハッと気づき、神崎さんの手には動物のイラストが刺繍されたハンカチがあった。

「ハンカチないの?貸してあげるから、これ使って!大丈夫?」

俺はその後、彼女とラインを交換しました。